作業療法士の職場として約7割の人が医療機関に勤務しています。
医療機関で行われるリハビリテーションには病状期によって求められる役割が異なってきますが、ここでは、「急性期」における作業療法士の仕事内容やメリット、気になる点などを紹介したいと思います。
[急性期]とは?
「急性期」とは、病気や怪我が起こり、急激に健康が失われた状態。
急性期病院では、患者さんの症状に応じて検査や処置、手術を行い24時間体制で治療を行います。
作業療法士の仕事内容
急性期のリハビリテーションでは、病気や怪我が起こった早い段階から治療と並行して行うリハビリテーションです。
その後の回復に大きく影響してくるためとても重要になってきます。
以前は、例えば手術後はまずベッドの上で安静にさせることでした。
しかし安静にしていることで、関節が固まったり、筋力が低下したり。心肺機能など臓器機能が低下が起こります。
「廃用症候群」のリスクが高まり、そもそもの病気や怪我が治っても、寝たきりになってしまう可能性が高まってしまいます。
そうならないためにも、現在は病気や怪我の治療はもちろんですが、早い段階からリハビリテーションも始め、できる限り身体機能の低下を防ぎ、回復の可能性を高めていくようになっています。
とはいっても、急性期の患者さんは、点滴や心電図モニターなどが付いていることもありますし、痛みがあることも多いです。体力も落ちているので、長時間のリハビリテーションは体に負担がかかります。
そのため訓練時間は20分~40分ほど。
リスク管理を行いながら、なるべく早くベッドから起き上がってもらい、動かなくなった身体を動かすリハビリテーションを行います。
またこの時期は身体機能だけでなく、患者さんの精神面のケアも重要です。
”リハビリテーション”というときついイメージですが、リハビリテーションを効果的に行っていくには精神的、認知的な落ち着きやバランスが必要になってきます。
患者さんの心の状態、休息バランスを見ながらリハビリテーションを行うのは作業療法士の大きな役割の一つです。
メリット
急性期で働く作業療法士にとってのメリットを紹介します。
[主なメリット]
- 多くの疾患を見ることができる。
- 術後の患者さんを見ることができる。
- 医師の指示を仰ぎやすい。
- リハスタッフ数が充実している。PT、STとの連携が取れる。
- 勉強会など充実している。
急性期がある病院は高度な医療技術をもち、複数の診療科を持つ大規模な病院や大学病院であることが多いです。
そのため多種多様な臨床経験を得られることができ、様々な疾患に対応した技術や知識を身につけることができます。
弱っていた患者さんが元気になっていき退院する姿を見やすい職場であり、やりがいを感じやすいです。
その一方で作業療法士にとって特に多い不安が、患者さんのリスク管理についてです。
急性期病院に入院した患者さんは、変化が激しいのが特徴です。
昨日までできなかった動きが今日はできるようになったり、逆にあっという間に症状が悪化してしまったり、緊張する場面が多く、リスク管理に不安をもたれる人が多いです。
しかしどの期にあってもリスク管理は必要ですし、急性期の場合、毎日のように主治医が診察し、看護師や理学療法士、言語聴覚士、ソーシャルワーカーなど、多くのスタッフが関わり、確認しながら行うため、それほど不安に感じなくてもいいという声が現場で多いです。
気になるポイント
一方でデメリットっというか、気になるポイントについても見てみましょう。
[気になる主なポイント]
- 患者さんが多く、じっくりというよりも「次」「次」と数をこなしていくリハビリになりがち。
- 勉強会などが多く、残業が多い。
- リハビリスタッフの入れ替わりが激しい。
急性期の患者さんは、病気や怪我の症状が急激に現れ、身体的、精神的な負担が大きい時期のため、長時間のリハビリテーションはできず、1人当たり20~40分ほど。
次々と患者さんを短時間でみていく、流れ作業的になってしまったり、書類作成や勉強会が多く残業が多かったり。
なにより、作業療法としてはこれからというところで退院してしまうので、そういう面でのやりがいが感じにくいところがあります。
まとめ
急性期のリハビリテーションは、病気や怪我、手術からできる早い段階から行うリハビリテーションです。
この時期のリハビリテーションは、身体機能の回復、維持というのではなく、「廃用症候群」の防止・軽減、そして次のステージに進んだ時にスムーズに回復につながるような橋渡し的な役割を持っています。
その後の回復に大きく影響するため重要なリハビリテーションです。
緊張感を持つ場面が多く、肉体的、精神的に大変ですが、様々な疾患に対応した技術や知識を身につけることができ、やりがいのある分野です。